オリジナルチョコレートの作り方|4つの製法から選ぶブランド構築ガイド
ブランドの世界観は「味」から始まる
「うちのブランドにぴったりのチョコレートを作りたいんです」
こんな相談が、私たちフーズカカオには毎月のように届きます。デザインは決まっている。ターゲットも明確。コンセプトだってしっかり練り込んだ。なのに、肝心の「味」だけがどうしても決まらない——。
正直に言うと、ここがブランド作りで一番難しいところです。
チョコレートって、香りという「目に見えない言葉」でブランドを語る商品なんですよね。パッケージを開けた瞬間の香り、口に入れたときの風味、溶けた後に残る余韻。すべてが、ブランドそのものを物語ります。
ただ、オリジナルチョコレートを作ると言っても、実は4つのまったく異なるアプローチがあります。どれを選ぶかで、味も価格も「語れるストーリー」もまったく変わってくる。
この記事では、その4つの選択肢を徹底比較しながら、あなたのブランドに最適なオリジナルチョコレートの作り方を解説します。
オリジナルチョコレート4つの種類|まず全体像を把握する
オリジナルチョコレートを作る方法は、大きく分けて4つあります。
| 種類 | 特徴 | 価格帯 | 独自性 |
|---|---|---|---|
| 高級クーベルチュール | 有名メーカーの高品質原料を使用 | 高め | △ 限定的 |
| 安価なクーベルチュール | コスト重視の汎用原料を使用 | 安い | × ほぼなし |
| Bean to Bar | カカオ豆から一貫製造 | 高め | ◎ 唯一無二 |
| ブレンド | 上記を組み合わせる | 調整可能 | ○ バランス型 |
それぞれにメリット・デメリットがあり、「どれが正解」という話ではありません。ブランドの目的、予算、ターゲットによって最適解は変わります。
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
【種類①】高級クーベルチュールを使う方法
クーベルチュールとは?
まず「クーベルチュール」という言葉から説明させてください。
クーベルチュールとは、カカオバターを一定以上含む製菓用チョコレートのこと。ヴァローナ、カレボー、カカオバリーといった有名メーカーが製造している、いわば「プロ用の原料チョコレート」です。
高級クーベルチュールを使う方法は、このプロ用原料を溶かして成形し、オリジナル商品として仕上げるというアプローチです。
メリット
品質の安定感が抜群
有名メーカーのクーベルチュールは、世界中のパティシエやショコラティエが使っています。味のクオリティは折り紙付き。「美味しいチョコレート」という土台は、最初から保証されているようなものです。
製造のハードルが低い
カカオ豆からの製造と比べると、工程がシンプル。溶かして、調整して、成形する。設備投資も少なく済むため、比較的始めやすい方法です。
ブランドストーリーに「有名メーカー使用」と書ける
「ヴァローナのチョコレートを使用」と言えば、それだけで一定の信頼感が生まれます。チョコレートに詳しい層へのアピールになりますね。
デメリット
独自性を出しにくい
ここが最大の課題です。同じクーベルチュールを使っている競合は山ほどいます。「ヴァローナ使用」は差別化ポイントにもなりますが、同時に「他と同じ」という意味でもある。
味の根幹が同じなので、フレーバーやトッピングで差をつけるしかありません。結果として「どこかで食べたことある味」になりがちです。
原料メーカーの方針に左右される
気に入っていた銘柄が廃番になったり、価格が急騰したり。原料を他社に依存している以上、コントロールできない部分が出てきます。
「本当のオリジナル」とは言いにくい
厳密に言えば、味の設計は原料メーカーがしたもの。それを加工しているだけなので、「オリジナル」という言葉に若干の後ろめたさを感じるブランドオーナーさんも少なくありません。
こんなブランドに向いている
- まずはリスクを抑えてチョコレート事業を始めたい
- 「美味しさ」の土台は外さず、パッケージやコンセプトで勝負したい
- 有名メーカーの名前を借りてブランドの信頼性を高めたい
【種類②】安価なクーベルチュールを使う方法
「安い原料」という選択肢
高級クーベルチュールの対極にあるのが、コストを重視した汎用クーベルチュールです。大量生産向けに作られた、いわば「業務用の普及品」ですね。
スーパーで売られているチョコレート菓子の多くは、こうした原料で作られています。
メリット
圧倒的な低コスト
原料費を大幅に抑えられるため、販売価格を下げられます。大量に販売するビジネスモデルや、ノベルティ・販促品としての利用には向いています。
供給が安定している
汎用品なので、調達に困ることはまずありません。急な大量発注にも対応しやすいです。
デメリット
味で勝負できない
正直に言います。安価なクーベルチュールで「美味しい」チョコレートを作るのは難しい。カカオの風味は薄く、後味に雑味が残ることも多い。
「チョコレート味がする」という最低限のラインはクリアしますが、それ以上の感動は期待できません。
ブランド価値を毀損するリスク
「安っぽい味」は、ブランド全体のイメージを下げます。食べた人の記憶に残るのは「なんか普通だったな」という印象。これはブランドにとって最も避けたい事態です。
ストーリーが語れない
「こだわりの原料を使用」とは書けません。産地の話も、製法の話もできない。パッケージとコンセプトだけで勝負することになります。
こんなブランドに向いている
- 大量配布のノベルティや販促品として使いたい
- チョコレートは「おまけ」で、本命は別の商品やサービス
- とにかく価格を最優先したい
正直なところ、「ブランドを作りたい」という目的には向いていません。 味での差別化を諦めることになるからです。
【種類③】Bean to Barで作る方法
Bean to Barとは?
Bean to Bar(ビーントゥバー)は、カカオ豆の選定から焙煎、粉砕、調合、成形まで、すべての工程を一貫して行う製法です。
ワインで言えば、ブドウ畑の選定から醸造まで自社で行うドメーヌのようなもの。「素材から味を設計できる」唯一の方法です。
フーズカカオが得意としているのが、このBean to Barによるオリジナルチョコレート製作です。
メリット
世界でひとつだけの味が作れる
これが最大の魅力です。
カカオ豆の産地、発酵方法、焙煎温度、配合比率——すべてを自由に設計できます。既存のチョコレートを調整するのではなく、ゼロから味を作り上げる。だから、他のどこにもない「あなたのブランドだけの味」が生まれます。
ストーリーの深さが違う
「インドネシア・エンレカンの標高1000m地帯で育ったカカオを、低温でじっくり焙煎して……」
こうした具体的なストーリーは、Bean to Barでしか語れません。産地の農家の話、発酵のこだわり、焙煎での試行錯誤。ブランドの世界観を支える「語れる物語」が、製造工程のあちこちに埋まっています。
香りで世界観を表現できる
クーベルチュールを使う方法では、フレーバーやトッピングで差別化するしかありません。でもBean to Barなら、チョコレートそのものの香りで世界観を表現できます。
夜のバーを思わせる深いビター感、朝の光のような透明感、森の湿度を感じるグリーンノート——こうした表現は、素材と焙煎から設計しないと実現できないんです。
デメリット
コストと時間がかかる
素材選定から始めるため、開発期間は長くなります。試作を重ねる回数も多い。当然、クーベルチュールを加工するよりコストはかかります。
専門知識が必要
カカオの発酵プロファイル、焙煎理論、コンチング(練り上げ)の技術——Bean to Barには専門的な知識と設備が必要です。自社だけで完結するのは難しく、私たちのような専門パートナーとの協業が現実的です。
安定供給のハードル
小規模産地のカカオを使う場合、天候や収穫量によって供給が不安定になることも。人気が出て増産したいときに、原料が足りないという事態も起こりえます。
こんなブランドに向いている
- 「他にない味」で本気で差別化したい
- ブランドストーリーを深く語りたい
- 価格よりも価値で勝負したい
- 長く愛される本物のブランドを作りたい
Bean to Bar|カカオ産地別の特徴
Bean to Barでは、カカオの産地選びがブランドの世界観を決定づけます。私たちが特に注目している産地をご紹介します。
インドネシア・エンレカン産
標高1000メートル。昼夜の寒暖差が生む、鮮烈な個性。
- きりっとした酸味
- 日本酒の吟醸香を思わせる華やかさ
- フルーティーで印象的な余韻
向いているブランド: ナチュラルワインのような個性派。「他と違う」を打ち出したいとき。
インドネシア・コラカ産
海沿いの未開拓森林地帯。穏やかで、どっしりとした風格。
- ほっとするナッツの香り
- しっかりしたロースト感
- 中庸でありながら厚みのある味わい
向いているブランド: 安心感や信頼感を大切にするブランド。老舗感のある世界観に。
タイ・ランパーン産
山岳地帯の清涼な空気が育てる、透明感のある風味。
- 花のような華やかな香り
- 繊細で上品な甘さ
- ハーブを思わせる爽やかな余韻
向いているブランド: 上品さやミニマルな美しさを表現したいブランド。
Bean to Bar|焙煎で「見せ方」を変える
同じカカオ豆でも、焙煎の仕方で印象はガラリと変わります。
高温短時間焙煎(150〜160℃)
- ナッツの香ばしさが前面に
- しっかりしたロースト感
- キレのあるビター
向いているブランド: 力強さ、男性的な印象。ウイスキーとのペアリングにも。
低温長時間焙煎(120〜140℃)
- フルーツのような酸味・甘みが残る
- 花のような繊細な香り
- 酸味と甘みの美しい調和
向いているブランド: 繊細さ、上品さ。ナチュラル志向のブランドに。
【種類④】ブレンドで作る方法
「いいとこ取り」という現実解
実は、多くのオリジナルチョコレートは**複数のアプローチを組み合わせる「ブレンド」**で作られています。
たとえば——
-
高級クーベルチュール × Bean to Bar:ベースは安定感のあるクーベルチュール、そこに自社焙煎のシングルオリジンを加えて個性を出す
-
Bean to Bar × 安価なクーベルチュール:看板商品はBean to Barで、ギフトセットの一部に価格を抑えた商品を混ぜる
-
複数産地のBean to Bar ブレンド:エンレカンの酸味とコラカのコクを組み合わせて、オリジナルのブレンド味を設計する
メリット
コストと独自性のバランスが取れる
Bean to Bar 100%は理想的ですが、コストの問題で難しいこともあります。ブレンドなら、「ここぞ」という部分にこだわりつつ、全体のコストを調整できます。
商品ラインナップの幅が広がる
ハイエンドラインはBean to Barで、エントリーラインはクーベルチュールベースで——という使い分けができます。価格帯の異なる商品を揃えやすくなりますね。
味の複雑さを演出できる
異なる産地のカカオをブレンドすることで、単一産地では出せない複雑な味わいを生み出せます。「うちだけのブレンドレシピ」は、それ自体がブランドの資産になります。
デメリット
ストーリーが複雑になる
「インドネシアの希少なカカオを使用」と「高品質クーベルチュールを使用」を両方言うと、メッセージがぼやけることも。ブランドストーリーの設計は、よりていねいにやる必要があります。
品質管理が難しくなる
複数の原料を扱うため、それぞれの品質管理が必要。ロットによるブレが出やすくなるリスクもあります。
こんなブランドに向いている
- 予算内で最大限の独自性を出したい
- 複数の価格帯で商品展開したい
- 「現実的な落としどころ」を探している
レシピ設計|どの種類でも重要な「質感」の決定
どの種類を選んでも、最終的には「レシピ設計」で味の質感を決めていきます。
甘さの設計
| 甘さ | 与える印象 |
|---|---|
| 控えめ | 知的、大人っぽい、洗練 |
| しっかり | 親しみやすい、ポップ、万人受け |
脂肪分の調整
| 脂肪分 | 与える印象 |
|---|---|
| 高め | リッチ、濃厚、高級感 |
| 控えめ | 軽やか、ミニマル、さっぱり |
テクスチャ(粒度)
| テクスチャ | 与える印象 |
|---|---|
| 粗め | ワイルド、素朴、クラフト感 |
| 滑らか | 洗練、高級、エレガント |
トップノート
ひと口目の香りは、ブランドの顔。バニラの甘さか、花の華やかさか、ローストの力強さか——第一印象がここで決まります。
パッケージデザイン|味とビジュアルを一体化させる
厳しい現実をひとつ。チョコレートは、味の前にパッケージで選ばれます。
だからこそ、味とデザインは別々に考えちゃダメなんです。
味×パッケージの成功例
| チョコレートの特徴 | 相性の良いパッケージ |
|---|---|
| Bean to Bar・酸味系 | ミニマルな白箱、余白を活かしたデザイン |
| 高級クーベルチュール・王道 | 黒×金の高級感あるデザイン |
| ナチュラル・透明感 | クラフト紙、ガラス瓶 |
**「味」×「デザイン」×「ストーリー」**の三位一体が、ブランドの価値を決めます。
4種類の比較まとめ|あなたのブランドに最適なのは?
| 項目 | 高級クーベルチュール | 安価なクーベルチュール | Bean to Bar | ブレンド |
|---|---|---|---|---|
| 独自性 | △ | × | ◎ | ○ |
| 味のクオリティ | ○ | △ | ◎ | ○ |
| コスト | やや高 | 安い | 高い | 調整可能 |
| ストーリー性 | △ | × | ◎ | ○ |
| 始めやすさ | ○ | ◎ | △ | ○ |
| 安定供給 | ◎ | ◎ | △ | ○ |
選び方の目安
「とにかく始めたい」→ 高級クーベルチュール リスクを抑えつつ、一定の品質は確保できます。
「コスト最優先」→ 安価なクーベルチュール ただし、ブランド構築には向きません。販促品向け。
「本気で差別化したい」→ Bean to Bar 時間とコストはかかりますが、唯一無二の味が手に入ります。
「バランスを取りたい」→ ブレンド 現実的な落としどころ。商品ラインナップの幅も広がります。
オリジナルチョコレートの作り方|7つのステップ
私たちフーズカカオでは、どの種類を選んでも以下の流れで進めています。
STEP 1:世界観のヒアリング
ブランドについて、じっくりお話を聞かせてください。どんな種類が最適かも、ここで一緒に考えます。
STEP 2:製法・素材の決定
Bean to Barか、クーベルチュールか、ブレンドか。予算と目的に合わせて最適な方法を提案します。
STEP 3:焙煎・配合の設計
Bean to Barの場合は焙煎プロファイルを、クーベルチュールの場合はベースの選定を行います。
STEP 4:レシピの詳細設計
甘さ、脂肪分、テクスチャを細かく調整。ブランドの人格を味として具現化します。
STEP 5:試作と調整
納得いくまで何度でも試作を重ねます。
STEP 6:量産体制の構築
安定して再現できる製造ラインを構築します。
STEP 7:パッケージとの統合
味とデザインを一体化させて完成です。
まとめ|ブランドをつくるとは「香りで世界を描く」こと
オリジナルチョコレートには、4つの作り方があります。
どれを選ぶかで、味も、価格も、語れるストーリーも変わる。だからこそ、最初の選択が大切なんです。
私たちフーズカカオは、Bean to Barを中心に、クーベルチュールの活用やブレンド設計まで、あなたのブランドに最適な方法を一緒に考えるパートナーでありたいと思っています。
あなたのブランドは、どの方法で、どんな味を持つべきか。
その答えを、一緒に探しにいきましょう。
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