チョコレートOEMの費用はどう決まる?原価のしくみと適正価格の見抜き方

チョコレートOEMの費用はどう決まる?原価のしくみと適正価格の見抜き方

チョコレートOEMの費用はどう決まる?原価のしくみと適正価格の見抜き方

チョコレートOEM見積もりのミーティング
はじめに:なぜ見積もりは分かりにくいのか

「だいたいの費用感でいいので教えてください」

チョコレートOEMを依頼するとき、誰もが最初に聞くことです。でも、返ってくる答えはいつもこうです。

「実際につくってみないとわからなくて……」 「ロット次第で大きく変わります」

正直、モヤモヤしますよね。チョコレートOEMの費用は、なぜこんなに見えにくいのでしょうか。

その理由は意外とシンプルで、チョコレートが農作物であると同時に「化学プロセスを必要とする加工品」だからです。カカオ豆の仕入れ値は天候や産地で変わりますし、温度管理や発酵プロセスには技術とコストがかかります。

ただ、もうひとつ大きな理由があります。

それは、「どんなチョコレートを作るか」によって、費用構造がまったく違うということ。実はオリジナルチョコレートには4つの作り方があり、どれを選ぶかで見積もりの桁が変わることすらあります。

この記事では、その4つの種類を踏まえながら、原価のしくみ、価格の妥当性、見積もりの読み方を、誰にでもわかるように整理しました。あなたの企画が「よくわからない見積もり」で止まらないように、ぜひ参考にしてください。


まず知っておきたい:オリジナルチョコレート「4つの種類」

見積もりの話をする前に、オリジナルチョコレートには4つのまったく異なるアプローチがあることを押さえておきましょう。

種類 概要 価格帯 独自性
高級クーベルチュール ヴァローナ等の高品質原料を加工 中〜高 △ 限定的
安価なクーベルチュール コスト重視の汎用原料を加工 安い × ほぼなし
Bean to Bar カカオ豆から一貫製造 高い ◎ 唯一無二
ブレンド 上記を組み合わせる 調整可能 ○ バランス型

この4つのどれを選ぶかで、見積もりの構造そのものが変わります。

「思ったより高い」「なぜこんなに安いのか不安」——そうした違和感の多くは、この種類の違いを理解していないことから生まれます。

では、具体的に費用がどう決まるのかを見ていきましょう。


1. チョコレートOEMの費用は「5つの要素」で決まる

5つの原材料
チョコレートOEMの価格は、基本的に以下の5つの要素で構成されています。

① 原料費(カカオ・砂糖・ミルク・油脂)

最も影響が大きいのがこの原料費です。そして、選ぶ種類によって原料費の構造がまったく違います。

【安価なクーベルチュールの場合】

大量生産された汎用原料を使うため、原料費は最も抑えられます。ただし、カカオの風味は薄く、「チョコレート味がする」という最低限のラインにとどまります。

【高級クーベルチュールの場合】

ヴァローナ、カレボー、カカオバリーといった有名メーカーの原料を使います。品質は安定していますが、原料費は安価なものの2〜3倍になることも。

【Bean to Barの場合】

ここが一番幅があります。カカオ豆の産地・発酵・焙煎によって、市場価格が10倍以上変わることもあります。

たとえば:

  • アフリカの大量生産豆:価格を抑えられる
  • 発酵管理されたスペシャルティ豆:やや高価
  • 単一農園のマイクロロット:さらに高価

ただし、「高ければいい」わけではありません。大事なのは、商品コンセプトや目的に合っているかどうかです。

【ブレンドの場合】

高級クーベルチュールをベースに、Bean to Barのシングルオリジンを加える——といった組み合わせで、原料費を調整しながら独自性を出すことができます。


② 労働コスト(配合・テンパリング・成形など)

チョコレートづくりは工程数が多いため、労働コストがかさみます。特にテンパリング(温度調整)や手作業が入る工程は、どうしてもコストが上がります。

種類による違い:

種類 労働コストの傾向
安価なクーベルチュール 低い(工程がシンプル)
高級クーベルチュール 中程度
Bean to Bar 高い(焙煎・粉砕・コンチングが加わる)
ブレンド 中〜高(組み合わせ次第)

Bean to Barの場合、カカオ豆の選別から焙煎、粉砕、コンチング(練り上げ)まで、すべての工程が加わります。その分、労働コストは確実に上がります。


③ 設備稼働コスト(洗浄・切替・温度管理)

これが**「小ロットだと高くなる理由」**のほとんどを占めます。

チョコレートの製造ラインは油脂を扱うため、毎回丁寧な洗浄が必要です。切り替えにも時間と材料がかかります。50kgでも300kgでも、準備の手間は変わりません。だから、ロットが小さいほど1個あたりの単価が高くなります。

種類による違い:

種類 設備コストの傾向
クーベルチュール系 溶解・成形設備のみ
Bean to Bar 焙煎機・粉砕機・コンチェも必要

Bean to Barは必要な設備が多い分、設備稼働コストも高くなります。ただし、フーズカカオのように自社で一貫して設備を持っている工場であれば、この部分を効率化できます。


④ パッケージ費(箱・袋・シール)

見落としがちなのがこのパッケージ費です。単価は安いように見えますが、ロットによる変動幅が意外と大きくなります。

  • :100個と1000個では、単価がまったく違います
  • 印刷:版代がかかる場合があります
  • ラインナップが多いと、在庫リスクも上がります

パッケージ費は、チョコレートの種類に関わらず同じ構造です。ただし、Bean to Barのような高付加価値商品であれば、パッケージにもこだわりたくなるもの。その分、費用も上がる傾向があります。


⑤ その他(送料・在庫リスク・品質保証)

食品の場合、品質保証にかかる費用も含まれます。製造側にとっては「事故を出せない」という重い責任があるため、その分が価格に反映されている部分もあります。


2. 種類別:費用構造はこれだけ違う

ここで、4つの種類ごとの費用構造を整理しておきましょう。

【安価なクーベルチュール】

項目 費用感
原料費 ◎ 最も安い
労働コスト ◎ 低い
設備コスト ○ 標準
独自性 × ほぼなし
総コスト 安い

できること:

  • 大量生産向けの低価格商品
  • ノベルティ・販促品
  • 「チョコレート味」があればOKな用途

できないこと:

  • 味での差別化
  • ブランドストーリーの構築
  • 「こだわりの〇〇」という訴求

正直なところ: ブランドを作りたいなら、この選択肢は避けたほうがいいでしょう。


【高級クーベルチュール】

項目 費用感
原料費 △ やや高い
労働コスト ○ 中程度
設備コスト ○ 標準
独自性 △ 限定的
総コスト 中〜やや高

できること:

  • 安定した美味しさの確保
  • 「ヴァローナ使用」等のブランド訴求
  • フレーバーやトッピングでの差別化

できないこと:

  • チョコレート自体の香りで差別化
  • 産地ストーリーの深掘り
  • 「他にない味」の実現

正直なところ: 「美味しさの土台」は確保できますが、競合と似た味になりがちです。パッケージやコンセプトで勝負する必要があります。


【Bean to Bar】

項目 費用感
原料費 × 高い(産地次第で変動大)
労働コスト × 高い(工程が多い)
設備コスト × 高い(専門設備が必要)
独自性 ◎ 唯一無二
総コスト 高い

できること:

  • 世界でひとつだけの味を設計
  • 産地・発酵・焙煎のストーリー訴求
  • チョコレートの香り自体で世界観を表現
  • 「夜のバー」「朝の光」といった抽象的なイメージを味で実現

できないこと:

  • 低価格での提供
  • 短期間での開発
  • 大量生産への即座の対応

正直なところ: コストと時間はかかりますが、本気でブランドを作りたいなら最強の選択肢です。フーズカカオが最も得意としている領域でもあります。


【ブレンド】

項目 費用感
原料費 ○ 調整可能
労働コスト ○ 組み合わせ次第
設備コスト ○ 組み合わせ次第
独自性 ○ バランス型
総コスト 調整可能

できること:

  • コストと独自性のバランス調整
  • 複数の価格帯で商品展開
  • 「うちだけのブレンドレシピ」という資産構築

できないこと:

  • Bean to Bar 100%ほどの深いストーリー
  • 完全な低コスト化

正直なところ: 現実的な落としどころとして、最も多くのブランドが選ぶ方法です。


3. よくある誤解:「シンプルだから安い」「小ロットだから安い」


混乱する依頼者
依頼する側に多い誤解を、ここで整理しておきます。

誤解①:シンプル=安い

レシピがシンプルだから安いと思われがちですが、実際には工程の数が価格を決めます。

たとえシンプルでも、温度管理が複雑だったり、溶解回数が多いと、価格は上がります。Bean to Barの場合、「シンプルな板チョコ」でも焙煎から始めるため、工程数は多くなります。

誤解②:少量=安い

これは逆です。製造・洗浄コストはロットに依存しないため、50kgでも300kgでも準備の手間は同じです。だから小ロットは割高になります。

特にBean to Barでは、焙煎機やコンチェの洗浄・調整が加わるため、小ロットのコスト影響がさらに大きくなります。

誤解③:試作が無料だと思っている

試作品にも、労働・材料・洗浄・設備コストがかかります。無料の工場が少ないのは、ここに理由があるのです。

Bean to Barの試作は、クーベルチュール加工よりもはるかに手間がかかります。焙煎プロファイルの調整だけで数回の試作が必要になることも珍しくありません。

誤解④:どの種類でも同じ見積もり方法だと思っている

これが最も多い誤解かもしれません。

安価なクーベルチュールとBean to Barでは、費用の構造がまったく違います。「チョコレートOEMの相場」という一般論は存在しません。種類によって、見積もりの読み方も変わるのです。


4. 良いOEM会社は「見積もりの透明性」が違う

透明性のある見積もり
適正価格かどうかを判断する一番のポイントは、**「見積もりの理由が説明できるかどうか」**です。

透明性のないOEM会社の特徴

  • 工程説明があいまい
  • 材料費が不明瞭
  • ロットに対して価格が不自然
  • どの種類のチョコレートを作るのか、選択肢を提示しない

良いOEM会社の特徴

  • 原料にいくらかかるか説明できる
  • 工程にどれだけ手間がかかるか説明できる
  • ロットが変わるとどう変動するか説明できる
  • 4つの種類のメリット・デメリットを正直に伝える
  • 目的と予算に合った種類を一緒に考えてくれる

フーズカカオも、ここを最も大切にしています。


5. フーズカカオが提供する「透明な見積もり」とは

フーズカカオは、単なる製造委託ではなく、「素材から一緒につくる」OEMをめざしています。だから、見積もりにも考え方があります。

① まず「どの種類が最適か」を一緒に考える

「Bean to Barで作りたい」というご相談でも、目的や予算によってはブレンドのほうが合っていることもあります。逆に、「安く作りたい」というご相談でも、ブランドの世界観を聞くと「それならBean to Barでないと実現できません」とお伝えすることも。

種類の選択から一緒に考えるのが、フーズカカオのスタイルです。

② 原料のストーリーまで共有する

Bean to Barの場合は特に、原料の説明を大切にしています。

  • 「エンレカン産の発酵プロファイル」
  • 「コラカのナッツ香の出方」
  • 「焙煎温度と風味の変化」

なぜこの原料なのか、なぜこの価格なのかを、きちんと説明できる体制を整えています。

③ ロットに応じて、費用を正直に提示する

小ロットで高くなる理由も、隠さずにお伝えします。Bean to Barで小ロットをご希望の場合は、「この部分にコストがかかります」と具体的にご説明します。

④ レシピ自由度を高くするための説明

甘さ・質感・香り・ボディ感など、目的別のアプローチをご提案できます。特にBean to Barでは、産地選定から焙煎プロファイルまで、すべてをカスタマイズできます。

⑤ 必要のない費用は省く

できる限り、お客様に無駄なコストを払わせません。パッケージ選定や設計でコスト削減が可能なこともあります。「Bean to Barじゃなくてもいい」と判断した場合は、正直にお伝えします。


6. 適正価格を見抜くチェックリスト
チェックリスト

OEMで失敗しないために、判断軸をまとめておきます。

① どの種類のチョコレートか明確になっているか?

見積もりを受け取ったら、まず「これは何を使って作るのか」を確認しましょう。クーベルチュール加工なのか、Bean to Barなのかで、費用の妥当性はまったく変わります。

② 原料と工程の説明は十分か?

説明できないOEMは避けたほうがよいでしょう。特にBean to Barを謳っているのに、産地や焙煎の説明がない場合は要注意です。

③ ロットが変わると価格はどう変わるか?

変動の理由が合理的かどうかを確認しましょう。Bean to Barは小ロットでの変動が大きいため、その理由を説明できるかがポイントです。

④ 試作費の内容は明確か?

隠れコストがある場合は要注意です。Bean to Barの試作は工程が多いため、費用がかかる理由を説明できる会社を選びましょう。

⑤ パッケージの提案力はあるか?

味と外装が合っていないと、商品として成立しません。

⑥ スケジュール感は現実的か?

食品OEMは納期変更リスクがつきものです。正直にリスクを伝えてくれる会社は、信頼できます。


7. 種類別:見積もりの「読み方」ガイド

最後に、種類ごとの見積もりの読み方をまとめておきます。

【安価なクーベルチュールの見積もり】

チェックポイント:

  • 原料費が極端に安い場合、味のクオリティに注意
  • 「安いから」という理由だけで選ばない
  • ブランド構築が目的なら、この選択肢は避ける

【高級クーベルチュールの見積もり】

チェックポイント:

  • 使用するクーベルチュールのブランドを確認
  • フレーバーやトッピングの費用が別途かかるか確認
  • 競合との差別化ポイントを別の方法で考える必要あり

【Bean to Barの見積もり】

チェックポイント:

  • 産地、発酵、焙煎の説明があるか
  • 試作回数と費用が明記されているか
  • 小ロットの場合、設備稼働コストの説明があるか
  • 開発期間が現実的か(通常、数ヶ月かかる)

【ブレンドの見積もり】

チェックポイント:

  • 何と何をブレンドするのか明確か
  • それぞれの原料費が分解されているか
  • ブレンド比率の変更で費用がどう変わるか

8. まとめ:費用を理解することは「ブランドの価値設計」である

チョコレートOEMの費用は、ただ「いくらで作れるか」ではありません。

  • どの種類を選ぶか
  • 素材にどこまでこだわるか
  • 発酵の深さ、焙煎の表現力
  • レシピの個性
  • パッケージとの調和

これらすべてを含んだ、ブランドの価値設計そのものです。

安価なクーベルチュールで安く作ることもできます。でも、それで本当にあなたのブランドは輝くでしょうか?

Bean to Barで高くなることもあります。でも、その費用の裏には、世界でひとつだけの味を作るという価値があります。

価格の裏側にある「理由」を知ることで、あなたのブランドはもっと強くなります。そして、その価値を一緒につくるパートナーとして、フーズカカオは存在しています。


オリジナルチョコレートの製作をご検討中の方へ

「どの種類が自分のブランドに合うかわからない」 「Bean to Barに興味があるけど、費用感がつかめない」

そんな段階からのご相談も大歓迎です。見積もりの前に、まずはあなたのブランドについてお聞かせください。

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