吉祥寺と下北沢でスペシャルティコーヒー専門店を展開するLIGHT UP COFFEEでは、Whosecacaoのカカオを使った『カフェモカ』と『ガトーショコラ』の開発を行っている。
果実の種子であること、それらを発酵させること、焙煎すること、粉砕すること。
意外にもカカオとコーヒーは多くの共通点をもっている。
本インタビュー記事ではLIGHT UP COFFEEを運営する川野優馬氏に、新商品『カフェモカ』と『ガトーショコラ』について、『コーヒー』の視点からみた『カカオ』について語っていただいた。
COLUMN
【INTERVIEW】LIGHT UP COFEE (川野優馬)
第1部 | コーヒーとカカオの酸味が重なる「カフェモカ」
第2部 | コーヒーとカカオが歩み寄る「ガトーショコラ」
コーヒーとカカオが歩み寄る
『ガトーショコラ』
生産地、精製/製造方法など、カカオとコーヒーには多くの共通点をもっている。
違いを述べるとすれば、それらの最終的な提供のカタチが液体(コーヒー)か固体(チョコレート)という点だろうか。
もしコーヒーの専門家『バリスタ』が『カカオ』を素材として向き合った時、どのようなものができるだろうか。
LIGHT UP COFFEEを運営する川野はWhosecacacaoのインドネシア・エンレカン県産のカカオを使って『ガトーショコラ』をつくった。世の中に多く出ているガトーショコラは濃厚な甘い味わいのものが多く、それに合わせるコーヒーは負けないぐらい強い味わい、コク、苦味をもった深煎りのコーヒーだ。もちろん、ショコラの濃厚な甘味とコーヒーの強い苦味のギャップは味覚を刺激し、美味しい。
しかしLIGHT UP COFFEEが提供する浅煎りで繊細な味わいのコーヒーと濃厚な甘さをもつショコラを合わせた時にコーヒーの味わいが負けてしまう。そこで川野は浅煎りのコーヒーと合わせやすい軽やかで、爽やかなガトーショコラをつくることにした。
今回LIGHT UP COFFEEが考えたガトーショコラはコーヒー業界とカカオの業界において、
どのような可能性を引き出し、そしてどのように歩みよることができるのだろうか。
— スペシャルティコーヒー専門店のバリスタがコーヒーのような液体の商品ではなく、固体の商品を作るのは少しハードルの高いことだと思いますが、今回の『ガトーショコラ』を作るに至った経緯を教えてください。
実はガトーショコラは去年のバレンタインから始めました。
コロナの影響で店頭が穏やかになりましたが、有難いことに色々な方にオンラインでコーヒー豆を買っていただいて。
なので店頭を盛り上げていくというよりは、需要が高まっているオンラインでもコーヒーの魅力にもっと気がつくような
商品を作りたいと思ったのがきっかけです。
でもそれでコーヒー豆の種類を増やしたところで、豆を買って貰える量は変わらないので、コーヒーと合わせる商品を作ろうと。購入したいただいた方にコーヒーの楽しい体験がより広がる商品を作ることにより、より一層コーヒーの魅力に気がついてくれるのではないかと思いました。
そう思った時に最初に作ったのがWhosecacaoのカカオ豆を使った「ガトーショコラ」でした。
— コーヒーをコーヒーで盛り上げるのではなく、コーヒー以外の要素を入れてコーヒーの体験を広げようと思ったのですね。 「コーヒーの体験を広げる」はどのようにしてガトーショコラで表現しましたか?
最初はコーヒーを入れた焼き菓子を作ろうと思っていたのですが、焼き菓子にすると実はコーヒーの風味が飛んでしまいました。またせっかく作るのなら、コーヒー以外のコミュニティが興味をもつような商品を作れないかと思っていたところ、Whosecacaoのカカオと出会いました。
そして商品を開発するにあたって気がついたのは「チョコレートって濃厚な味わいのものが多いな」と。
それはそれで美味しいのですが、でも濃厚な味わいのスイーツに合わせるコーヒーは深煎りな濃いコーヒーが多いんですよね。浅煎りの繊細な個性を持ったコーヒーだと、コーヒーがチョコレートに負けてしまいます。
LIGHT UP COFFEEは浅煎りで、爽やかな味わいのコーヒーを取り扱っています。
そう思った時に深煎りなコーヒーに合う濃厚な甘いスイーツではなく、浅煎りのコーヒーに合う軽やかなチョコレートのスイーツを作りたいと思いました。もう丸々一本をパクパク食べれてしまうぐらい軽やかなガトーショコラとか笑
— 確かに、意外にそういった軽やかなガトーショコラはなかなかないですよね。
はい。
そう思った時にWhosecacaoのカカオが気になり、お声がけさせていただき、いくつか原料のサンプルを送っていただきました。
いくつか原料を試してみて、今回はカフェモカと同様にインドネシア・エンレカン県産のカカオマスを使うことにしました。
繊細なチョコレートを作ろうと思った時に、浅煎りのエンレカン県産のカカオがフルーティな酸味と甘さが丁度いいバランスがあって、今回のガトーショコラととても相性がよかったです。
—実際に販売した時の食べ手からの評判はいかがですか?
また今年のガトーショコラは去年とどこか違いはありますか?
とても大好評でした。
エンレカンのカカオらしいフルーティで、綺麗な酸味をもったガトーショコラに仕上がり、食べた後にコーヒーを飲んでもちゃんとコーヒーが勝つというか、同等ぐらいというか、ガトーショコラを食べたあとにコーヒーを飲んでも、しっかりとコーヒーの味わいが口の中に残ります。
もちろん、単体で食べても軽やかにパクパクと食べられるような商品にもなりました。
去年との違いは、実は去年のガトーショコラは少し味わいをとがらせていたので、
今年はカカオマスを少しだけ減らして、砂糖を少しだけ増やすことでより、誰でも楽しめるようなプロダクトとなったと思います。
— コーヒーもカカオも両方をしっかりと楽しめる商品ですね。コーヒー好きのコミュニティが楽しめるのはもちろんですが、チョコレート好きのコミュニティもしっかりと巻き込んでいけそうな商品だと感じました。
そうそう、そういうこともしたいと思いました。
コーヒーとカカオってとても実は近い存在で、違いは液体(コーヒー)か固体(チョコレート)の違いぐらいではないでしょうか? 実際に吉祥寺店で店頭販売していた時にコーヒー好きではなく、チョコレート好きな方がいらっしゃり、その時もとても喜んでいただけました。
—今後、カカオに期待することはなんですか?
まだ僕もカカオについては分からないことが多いので、その質問は難しいですが、でも今後もカカオを使った商品は作り続けたいと思っています。
そしてコーヒーとカカオは生産地も精製や製造方法も凄く似ているので、少しずつ歩み寄れるような、コーヒーとカカオが共通言語になるようなプロダクトを作っていきたいと思っています。
Whosecacao
大西 陽
川野 優馬 慶應義塾大学在学中に「LIGHT UP COFFEE」を創業し、卒業後、2015年にリクルートホールディングスに就職。新規事業開発等を経験した後に退職。その後は経営者およびバリスタ、ロースターとして「LIGHT UP COFFEE」に専従。「美味しさ」を軸にした、消費と生産の正の循環をつくり、農園の営みを持続可能にし、美味しいコーヒーを増やすことに尽力している。2019年、オフィス向けのサブスクリプションコーヒーサービス「WORC」をスタートさせた。 Web : https://lightupcoffee.com/ |
Interviwer :
大西 陽 ヨーロッパを中心にファッションデザイナーとして活動後、2012年帰国。 複眼的な視点を持ったデザインを行いたいという想いから、分野の垣根を超えた接点を持つ食の分野に興味を抱く。 2020年よりWhosecacaoでクリエイティブおよびにPRを担当。バリスタとしての経験も豊富。 |